宝鑑

第Ⅰ章:体;2

2.生存競争に生存闘争、自然(とう)()に適者生存、これらを道義心を以て知り、正義感を以て隠忍せよ。

2:1.共存共栄という理想を懐き続けつつ、争名争利という現実に臨み続けよ。不健康な社会生活を生き延びては、健康的な私生活を送れるようにせよ。己の体を誠に労わり、己の脳を確りと鍛えよ。

2:2.功名利(ろく)よりも頭脳明晰の方が遥かに優良だ。政治家達も企業家達も、教育家達も宗教家達も、従順な愚者達・問わない有能者達・疲弊し切った身体と思考を止めた脳髄の持ち主達を求めている。

2:3.(アッラー)を崇拝して理を窮め、定律を明らかにして性を尽くし、そして(アッラー)から授かった命に至って、大義名分を知り行うのだ。大義名分は、通念や自我ではなく、道理や運命で成る学道である。

2:4.進歩を志向しつつ、好景気の時はより一層慎み深くし、不景気の時はより一層奮い立つ。平和を深愛しつつ、戦争を覚悟し、用意周到であり続ける。無事も有事も、平時も戦時も、学び続けよ。

2:5.「生計の維持」・「利潤の追求」・「人間なんだから」、これらは原始的な内容であり、理由ではなく口実に過ぎない。「生活の向上」・「意義の確立」・「改善の続行」、これらこそが基本的な内容。

2:6.確りと鍛錬し続けよ、胴体も頭脳も。だが、利得の為ではなく健康の為に、名望の為ではなく奥義の為に、続けよ。健康は自己実現の一つであり、自己超越が奥義の一つである。至り深し!

2:7.競うのは、当たり前であり、そして正しい。だが、不公平が当たり前になり、不正が(まか)り通れば、世そのものは堕在する。競いが、争いになるか、それとも学びになるか、誠に学び知るのだ。

2:8.生き生きとした無秩序、これが道を体得した原始共同体と原始社会。疎外に陥った秩序、これが道を喪失した巨大科学と文明社会。堕落し切った無秩序と争乱、これが末世。求道心を育むのだ。

2:9.殺人から利益や快楽を得る者達が実在するように、戦争から巨富や歓楽を得る者達も実在する。その実在を否定すること(なか)れ、だが肯定もすること勿れ。正論と文徳に正義と武徳を以て挑戦せよ。

2:10.生殖に利殖、集金に募金、節約や倹約、蓄財に理財、分配に投資、決断に強行、これらが大義に適い、公明正大で有意義なものにせよ。経済家にして経世家、資産家にして篤志家を誠に志せ。

2:11.衣食住に家政、心技体に医術、知情意に健康、備蓄に食育、徳育に情育、知育に体育、訓育に薫育、教練に教養、これらが道義的で適宜、そして信義誠実の原則を貫く徳教にせよ、総司令官。

2:12.寛厳宜しきを得て、公平無私と厳正中立を以て勧善懲悪と信賞必罰を成し、公共の利益及び福祉を実現せよ。誠心誠意を尽くして精励(かっ)勤して、先憂後楽に先義後利を成し、賢良方正であれ。

2:13.誠に奮励努力し続け、体元居正を護持し続け、刻苦勉励し続けて功徳兼隆という実績を収めよ。そうすれば、怠慢な者達・狡猾な者達・愚劣な者達は淘汰され、早計も私計も愚計も消える。

2:14.内界という根本的な環境・外界という現実的な環境・人間関係という決定的な環境・社会という軽薄な環境・大自然という深奥な環境、これらを誠に知り、確りと学んで、主体的に応じよ。

2:15.天理と欲求、両者を窮めれば忠義と信義が成立する。根源は至微至妙にして至公至平、原始は外強中乾にして無学無知。窮理して決心すれば忠義が成り、克己して献身すれば信義が成る。

2:16.明敏な頭脳・強健な身体・信実な関係・学習の時間、これらが四宝であり、決断力と実行力の動力であり、意力が原動力である。知って問い、護って鍛え、確かめて選び、常に学び続けよ。

2:17.「正義と邪悪」という対立は滅多に無く、「邪悪と邪悪」という対立は稀、「正義と正義」という対立は寡少、「偽善と偽善」という対立は頻繁、「欺(まん)と欺瞞」という対立は日常。猛省せよ。

2:18.正義感が、実際は、悪感情であり、劣等感であり、挫折感であり、無力感であり、不快感であり、嫌悪感であり、優越感であり、閉塞感であり、そして、無知と重病であることは、甚だ多い。

2:19.最善の正義は、正に他ならぬ克己猛省であり、最高の正義は、正に他ならぬ自己批判であり、最大の正義は、正に他ならぬ堅忍果決であり、最適な正義は、正に他ならぬ隠忍自重であるのだ。

2:20.至誠なる正義感の以前は違和感で、その以後は使命感。至誠なる忠義心の以前は克己心で、その以後は独立心。至誠なる義勇の以前は強理(けい)直で、その以後は一致団結。大義の前後は教育。


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