宝鑑

第Ⅴ章:空間;5

5.あの因果は何故(なにゆえ)だ?その関係は何の為だ?この挑戦は何に成るのだ?問いつつ信じ続けるように。

5:1.利害関係そして人間関係に、正真正銘の終止符を確りと打ちこんでは、隠忍自重や堅忍不抜の結実を正しく自得して、本物の独立自尊の自由人に成り、そして孤高を以て個人的関係を構築せよ。

5:2.対人関係こそが、最も多くて最も深く、また最も根本的で最も実際的、そして最も困難で最も厄介な問題である。その問題を軽視・蔑視・無視する所から潔く去って、その問題を誠に研究せよ。

5:3.技術革新は確かに必要不可欠な課題である。だがそれは最も大事な末端に過ぎない。人心一新こそが根本の表層であり、徳高望重こそが根本の深層であり、そして率先垂範こそが根本の奥底だ。

5:4.能力主義に勤務評定の前に理念の体現を、成果主義に人事考課の前に目的意識の確立と目標の自主管理の補完を、実力主義に信賞必罰の前に道徳意識と規範意識とその率先垂範を、成し遂げよ。

5:5.観念そして理念を、私生活や家庭生活での実践躬行(きゅう)と社会生活や職業生活での率先励行で、制度そして体制を、哲学的や科学的な稽古・道徳的や倫理的な復習・知的や美的な習慣で、実らせよ。

5:6.保守せよ、伝統や正統等に、統一や純一等ではなく、そう、歴史とその真実の明示に、正しい懐疑・批判・告発・追及を敢行する者達を。革新せよ、技術や社会ではなく、まずは意識や生活を。

5:7.学習しなければ、懐疑心は(さい)疑心へと悪化する。窮理しなければ、禁欲主義は実質的に自傷や自虐へと堕落する。熱誠であれば、冷笑もまた正解である。謹直であれば、悲観もまた達観である。

5:8.確かに、最初に知る対象、そしてほとんどの知る対象は、他者に事物や現象等、そして現実世界にして物質世界である。まずは無知を知り、そして己自身を知り、やがては(アッラー)も知ろうと志せ。

5:9.拡充するべき施設は、娯楽や観光ではなく教育や福祉の施設では?確立するべき意識は、集団意識や競争意識ではなく自己意識や目的意識では?痛覚や苦心ではなくて、無知や貪欲を無くせ。

5:10.信義誠実の原則を、本当に訓育しつつ、誠実に体現しながら、確かに貫徹し、そして薫育を完遂せよ。他者を苦しめること(なか)れ。だが他者と自分が苦しむのは当然。良心は心を苦しめる教官。

5:11.振り返れば、過不足に失敗や無駄、そして誤謬(びゅう)や決別だらけである、これこそが、志とその孤高なる挑戦に満ち溢れた道の歴史である。大地こそが本場である、故に地味な渡世で地道に学べ。

5:12.重力が大き過ぎれば、急速や飛躍は難しくなり、逆に小さ過ぎれば、打ち込みや衝突は難しくなる。軽快な評言で権限委譲に軟化や多様化を、荘重な励行で綱紀粛正に強化や統括を果たせ。

5:13.好かれようとすること(なか)れ。分かって貰おうと勉めるべきではない。愛されようと工夫しなくても良い。方正謹厳を以て決行し、謹厳実直を以て続行し、謹厚慎重を以て遂行する事こそが道。

5:14.現場や実地に内実等とその問題を直視しては熟視し、理解を以て熟思し、道理を以て熟考し、生命への慈愛を以て熟慮し、熟睡した後に、熟知を以て熟議し、円熟しつつ問題の解決を遂行せよ。

5:15.「取り組む」と言うが、では、まず「何に何の為に」、次に「何で何を取り」、そして「何と何を組み合わせたり、何と何が組んだりする」のだろうか?篤信・忠信・誠信を以て自問自答せよ。

5:16.正しく問題視しては、正しい向上心を確立して、価値(じっしつ)を再構しつつ問題を解決せよ。正しく危険視しては、正しい警戒心を確立して、規準を是正しつつ危険を排除せよ。自警(もうせい)しつつ自警(げんかい)せよ。

5:17.厳格な基準とその徹底的な遂行が、精確で高度な完成を成す。厳正中立な裁決とその実際的で冷厳な断行が、全面的な正義と公正な秩序を補完する。熱烈峻厳(しゅん)を以て厳命・厳戒・厳罰を成せ。

5:18.神々しい聖哲に成ることを志せ。だが、「(なん)()りも聖なり」という高い意識と、確かな実力と本当の成功の持ち主になるという「途中」を、必ずや超克せよ。孤高であり続けつつ謙虚にも成れ。

5:19.徳を生して激痛の突発と多発に続発さらには激増に臨み、徳を育んで、無知の知と己自身に対する知そして万苦を自得し、徳を成して多責に応じつつ多難に挑み、徳に成り、後々に徳を遺せ。

5:20.信用される、その外装は「活躍」で、その内装「酷使」。信頼される、その外幕は「栄誉」で、その内幕は「損耗」。信愛される、その正体は「徳望」で、その遺産は「教訓」。愛と徳こそが本物。


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