徳九倍層

『徳九層倍』:上篇「実事求是」;上章「政治」〔乱而敬〕(⒈-⒍)

⒈「常に調っている」という状態に状況は「単調」であり、「常に調える」という性向に意向は「新調」である。単調が長く続けば、乱調が突発しては、多発して、続発することに成り、新調が久しく途絶えれば、単調が単調を再生産する上に諸々を単調に強く深く固着させる。確かに乱れが災いに直結することは多く、また災いをより一層深刻化させることも甚だ多い。だが生きているからこそ、手を静止させても、その指先は微かに揺れ動いている。動きの無い静けさは無く、静けさの無い動きもまた無い。これが生理と物理そして摂理に由る自然現象である。物体である身体と同時に、化学反応とその事象である意識も同様である。誠に知れば善く乱れ、誠に学べば正しく調う。

⒉「均整」という美的形式原理の一つとその形式主義の幾何学的な教理、「調和」という大自然の摂理に由る変化の中の一瞬の極致、「美感」という感覚的認識とその感性の所産の中の所産。教理を正しく窮めては、自覚して直覚し、極致と知の極致を一致させては、直観して達観し、所産を善く研磨しては、直感して実感せよ。そして、均整な体格と端整な風格を持った才覚の有る苦労人・同ぜずに和する()然にして超然とする知識人・知徳俊英で尽善尽美する文化人に成るのだ。有意義な苦労も直観的な知識も忠実(まめ)忠実しい教養も、熱誠に兼学しては豊富に兼備してこそ、道が開ける。

⒊性欲は、動物である人間とその脳を、強くしては、愚かにして、狂わせる。恋心は、生命である人間とその意識を、向上させては、偏向させて、深化させる。恋慕は、有機体である人間とその情操を、発生させては、成長させて、進歩させる。友()は、生命体である人物とその意志を、強化しては、良化して、美化する。立志は、自己組織化する大人物とその徳、そして自発的秩序形成する宇宙人とその道を、進化させては、深化させて、転化させる。誠に修道し続ければ善く狂い、誠に修徳し続ければ善く病み、誠に積徳し続ければ美しく孤立し、誠に盛徳を果たし続ければ美しく失敗し、尽くしては儚く失い、悟っては虚しく去り、至っては空しく終わり、還元しつつも遺伝する。

⒋「本能」という、確りと保存された上で規則正しく一定化された体系的な熱運動・極めて高度で秩序立った複雑多岐な化学反応・化学的で自動的な定式・巧()を極めた偏()とそれを動的に保存しつつ静的に変動を引き起こす均衡の所産。これらを、内観に静観と止観そして直観を以て誠に確りと学び直し続けて、狂気を強大で確固たる純良な意気へと、正気を真正で整然たる純正な才気へと、乱心を至誠で善美なる有徳の本心へと、良心を至情で理解のある賢明な苦心へと、転化させるのだ。乱れが無い事は決して無いが、治まりや治りが無い事は確かにある。敬意を以て治しては治めよ。

⒌いわゆる「官僚制」に「官僚政治」そして「官僚的」や「官僚主義」等の否定的で批判的な言葉があるが、それでは「民主制」に「民主政治」そして「民主的」や「民主主義」等の言葉に関してはどうだろうか?その理想と現実を熱誠に比較しては、その理念と実情を精確に比較して、現実界に実社会と実生活そして生態の実態を、社会学を以て熟視し、人類学を以て熟考し、動物学を以て熟思し、生物学を以て熟慮し、その後、熟練した社会技能と熟達した社会性に円熟した個性の持ち主として人間学を以て熟睡し、そして、本義の体現を務めよ。本義が確立すれば道義が開拓される。

⒍「御役所仕事」そして「役人根性」とは何か?その仕事は、政治的即ち利他的な代行サービスであり、あらゆるサービス業の率先垂範であり、営利的で市場性のある提供ではなく、義務的で公共性のある奉仕であり、実利主義に功利主義ではないものの、それらを誠に確りと参考にしては応用する法治主義に徳治主義であり、その根性は、極めて精確かつ確実な形式主義と、極めて高度な道徳意識と社会意識に規範意識、そして他者意識に問題意識と目的意識等に基づく現場主義、そして適正な出入・増減・緩急・硬軟・進退・存廃・改廃・寛厳等を実現する実用主義を決行する根性骨。


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